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カメラ・レンズの構成

レンズの「絞り」とは?

レンズの「絞り」について

前の記事では、レンズの「焦点距離」について簡単に概要を解説しました。今回は、レンズの「絞り」についてのご紹介です。

「絞り」と言われても、イメージが沸かないと思うので実際の写真を見てみましょう。下記図1は、左からレンズの中の「絞り」を開放=全く絞らない状態の写真、その右隣が「絞り」を少し絞った状態の写真、一番右の写真が「絞り」をさらに絞った状態の写真です。

赤い矢印で示した部分がレンズの中に入っている「絞り」です。レンズ単体で「絞り」を調整できるレンズでは、このように自分で絞りを設定するリングを回すと「絞り」を見ることができます。

図1 レンズの「絞り」の外観写真(左:絞り開放 中:左から絞り 右:さらに絞り)

「絞り」の役割の一例として、「遠くまでピントが合うようにする」という役割があります。例えば目の視力が悪い人がメガネを掛けずに遠くを見ようとする場合、目を細める習慣がある人が多くないでしょうか?

目を細める=まぶたを半分閉じる という行為が、レンズの「絞り」を絞るという行為に似ています。レンズを絞ると遠くまでピントが合うようになる代わりに、図1のように光が通る部分が狭くなるので、同じシャッタースピードで撮影すると暗く写ります。

シャッタースピードについては別の記事で解説しますが、例えば適切な明るさの写真を写すのに100の光の量が必要と仮定します。レンズの絞りが開放の状態の場合、このレンズは1秒間に100の光の量を取り込むことができるとします。

このとき、レンズの絞りを1単位絞り、光が通る穴の大きさが半分になったとします。そうすると、同じ1秒間しか光を通さない(=シャッタースピード:1秒)と50の量の光しか通せないので、写真は十分な光の量を確保できず暗くなります。

一方で、1秒間に50の光の量しか通せないレンズで100の光の量を得ようとしたら、光を2秒間通す(=シャッタースピード:2秒)必要があります。光を通す時間が1秒から2秒に長くなるため、この時間手がブレたりすると所謂「手ブレ写真」になって画像がブレブレの写真が撮れます。

よって、レンズの絞りを絞って撮影する場合は、手ブレとの戦いになりやすいです。手ブレをしないためには、①三脚でカメラを固定する、②カメラのセンサーの感度(ISO感度)を上げて、100の光の量が必要な写真を50の光の量で撮れるようセンサーを敏感にする方法があります。

※カメラのISO感度については、また別の記事で解説します。

★レンズの「絞り」の表記について

レンズの絞りは、f値と呼ぶ数字で表現されます。f値が大きいほど絞る方向で光が通る量が少なく、光を長い時間取り込む必要があります。f値が小さいほど光が通る量が多いため、短い時間で十分な光の量を担保できます。

下図2が実際のレンズに記載されたf値です。

図2 レンズに表記されたf値(f値の上にある●を各f値に動かすことで、絞りを調節します)

f値は大まかに下記のように数字が変遷していきます。

f値:1.4 →2.0 →2.8 →4.0→5.6→・・・・

最近のレンズはさらに細かくf値を刻むことが可能ですが、昔のレンズは上記の数字ごとにしか絞りを変えることができないため1.4 →2.0 のようにf値を変更することを「1段絞る」と表現します。「2段絞る」とすると、1.4 →2.0 →2.8と絞りを変化させることです。

※最近のレンズはカメラのダイヤルで上記f値を1/3段ずつ調整することが可能です。

図2のレンズは小型の単焦点レンズで、f値は2.8スタートです。これ以上明るいf値を取ることはできません。レンズによってはこのスタート(開放の絞り値)が1.4や2.0などもありますが、これらは光を沢山取り込むためにレンズの直径(正確には絞りの開口直径)が大きくなるためレンズがサイズアップします。

f値の数字の意味など、細かいことは覚える必要はないと思います。ただ、1.4 →2.0 →2.8のように2段絞るとf値が1.4から2.8と2倍に変化する(=1段絞る:√2倍)ことは頭の片隅に入れておいてもよいと思います。

★f値が小さい「明るいレンズ」は大きく重い、値段が高い傾向

上記でも少し触れましたが、絞り開放のf値が小さい所謂「明るいレンズ」は光を沢山入手することができるため、短い時間で必要な光を担保できる(=写真がブレにくい)メリットがあります。

一方で、レンズが沢山光を取り込めるようにレンズの直径が大きいレンズが多いです。レンズの直径が大きいということはガラスの塊を多く使うので、レンズが重くなります。また、直径が大きいレンズを均質に製造・研磨するのは高い技術が要求されますので、レンズの価格も高くなりがちです。

その代わり、絞り開放で撮影すると大きなボケを得られるため、ボケを活かした写真には欠かせません。また、室内など暗い場所では十分なシャッタースピードを得やすいので独壇場になります。

レンズのサイズを取るのか、画質を優先するのか等は各人の撮影スタイルや撮影目的によって変わるので、正解はありません。

実際に使用してみて、この撮影目的であればここまで巨大なレンズはいらないな、など調整していってください。

今回はここまでとさせていただきます。

それでは、また!